全国大家ネットワーク、起動 (大西 倫加)

2011-07-06

大西 倫加 (おおにし のりか)

2011年4月某日―。

さくら事務所の狭い会議室に、錚々たるメンバーが集まりました。業界誌編集長、大家さんへ行動を促し自ら行動する者、業界をリードし情報発信・啓発を続ける者、大家業にある既存の常識に挑戦し続ける者・・・。
彼らの業態や活躍するフィールドはさまざまですが、たったひとつ共通項をあげるならば、「自らが変化の中心であり、自らが行動している」ことでしょうか。

日本全体を深い絶望と劇的な変化で覆い尽くした、あの日以来も彼らはそれぞれのポジションや役割において模索と行動を繰り返してきました。「本当に難しい問題」の解を探し、彼らは今も手探りで進んでいます。

「本当に難しい問題」とは解がいくつもあって、そのどれもがもっともらしく正しく見えるもの、と私は考えています。あるいは正解は、一人ひとりの心の中にしかないものかも知れません。

あらゆる場面で「想定外」との言葉が用いられた東日本大震災による未曾有の被害は、私たちの日常に「本当に難しい問題」を突きつけました。被災者の方々や被災地の復興はもちろん、私たちが身をおく賃貸住宅市場の中長期的な行方についても、わかりやすく明快な正解など誰も持ち合わせてはいません。

そのような状況下において、彼らは「本当に難しい問題=いま自分たちが成すべきことは何か」を自らの胸に何度も問いながら、できることから行動を起こし始めています。
各所で点として存在する、この得がたい行動をもし線でつないだら。もし大家業界全体のうねりとして、これらの行動が広がったとしたら。5月28日のシンポジウムはそんな思いから企画されました。

震災を機に、民間賃貸住宅というインフラは被災者生活再建の重要な要として存在感を増しています。個人の善意による住宅提供という、支援の輪も広がりつつあります。

「居は気を移す。養は体を移す。大なる哉居也」(孟子)
住まいは私たちの生活、人生そのものに大きく影響を与える基盤であり、大家業はこれ以上ない重要インフラ、安心や幸福という基盤を支える事業です。シンポジウムで一番訴えたいことは、この小冊子タイトルでもある当たり前の事実に尽きます。
「大家さんは社会を変える力を持っている」

社会を変える力を持ち、人生の土台であり社会資産である住宅を供する存在にも関わらず、大家業という事業は日本の住宅市場において長らく社会的認知が低いままでした。この状態を「変えよう」と走り出した者、そして「いま私たちが成すべきことをしよう」という者が集まり、今回のシンポジウムを開催したのです。

この先を一緒に走ってみませんか?
すでに行動している者、行動したいと思っている者、状況も立場も行動もさまざまだとしても、私たちは彼らと一緒に走ることができる、つながることができる。そう信じています。

あなたと不動産との関係が、より幸せなものでありますように。


<プロフィール>
大西 倫加 (おおにし のりか)
株式会社さくら事務所取締役、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会理事をはじめ、複数の企業・NPO法人の経営に携わりつつ、不動産・建設業界専門で、企業・個人のPRディレクターや書籍ライターなどを務める。 著書『建物調査入門』『住宅脳クイズ100問』など。執筆協力も多数。


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