3.11後の大家業はどうなる?! (榎本 ゆかり)

2011-07-06

榎本 ゆかり (えのもと ゆかり)

「3カ月無償で部屋を貸します」
「家賃は1カ月無償にするけれど、敷金はもらいます」
「行政が借り上げてくれるなら貸します」
「期間限定無償で貸すのは問題ないけれど、無償期間後、行くあてもない人に立ち退き行為をするのは心情的に難しいので、貸しません」

家を貸す――。

震災後、さまざまな家主さんの反応を見て、改めてこの言葉の意味を考えています。
生きていく上で必要な「衣・食・住」の「住」の場を他人に提供する行為。
「空いている部屋があるから貸す」という単純な発想でできることではありません。家を貸すということは、相手に生活をする権利を与えることであり、有償でも、無償でも度合は異なりますが、リスクが生じます。
家主の皆さんはそのことを知っています。しかし、一般の人の多くはそんなリスクがあることを知らないでしょう。

そのため、冒頭の1つ目、2つ目の発言について世間から「さすが家主」と思われるならいい方で、「それぐらいは当然の行為」と思われるかもしれません。3つ目にいたっては「行政に頼って、収入減を逃れようとしている」と非難される可能性が高いでしょう。4つ目の発言に対しては「なるほど」という反応もあれば、「そんなことを考える前に必要としている人がいれば貸してあげるべき」という反論があるかもしれません。

いずれにしても、残念ながら一般の人の多くは家主の行為について好意的に見ないと思うのです。なぜならば、世間は「家主は不労所得」という認識が強いからです。その最たる要因は「家を貸す」という行為が、事業として認識されていないからではないでしょうか。事業として認識してもらうためには、家主は単なる富裕層ではなく、事業家であるということを理解してもらう必要があり、顧客である入居者の満足度を向上するための努力が欠かせません。

「貸すことのリスクを何も知らない」と嘆いても、不動産賃貸業について理解されなければ、無意味です。このままでは今、消費者保護法を盾にしたトラブルが多発し、貸しにくくなる一方です。
今こそ、家主の皆さんが一丸となって、不動産賃貸業について、社会に理解してもらう動きが必要でしょう。

<大家さんへのメッセージ>
仏教の教えに「十二縁起」というものがあります。なぜ苦しむのかという最初の項目に「無明(無知)」があります。物事を解決するためには、まず知識や情報が必要です。皆で共有してより良い賃貸住宅環境を作るヒントにしていきましょう。


<プロフィール>
榎本 ゆかり (えのもと ゆかり)
東京都生まれ。日本女子大学卒業後、亀岡大郎取材班グループに入社。
住宅リフォーム業界向け新聞、リサイクル業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌などの記者を経て、平成15年1月「週刊全国賃貸住宅新聞」の編集デスクに就任。翌年9月に取締役編集長に就任。 新聞、雑誌の編集発行のかたわら、家主・地主や不動産業者向けのセミナーで多数講演。2児の母。


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