3.11後の大家業はどうなる?! (落合 淑彦)

2011-07-06

落合 淑彦(おちあい としひこ)

「未曾有の大災害」、言葉で書くとこうなりますが、今回の大災害は阪神大震災後日本が何度か経験した「大地震」とは違い、文字通り全てを流し去った「津波」による被害が被災された方々を苦しめました。流し去ったものは「家屋」という物理的なものだけでなく、「肉親の命、更に思い出」までも一瞬で奪い去り、被災された方々の生活再建を一層困難なものにしています。

そのような状況で、多くの大家さんが「空室を活用して」という運動に参加しましたが、そこには多くの課題が浮き彫りになりました。無償提供による「使用貸借」の限界、格安家賃を設定した場合の「賃貸契約のリスク」、ハコの提供だけでなく、被災地/居住地自治体からの「情報ルートの確保」など等。これらの課題は大家さんという個人では対処できるものではなく、またボランティアとして活動している大家さん集団であっても、単独で解決できる問題ではありません。

つまり他のボランティア活動と同様に、行政との連携が不可欠となります。過去において災害直後に“行政がボランティアを受入れられない状況”が発生しました。これは「いい加減な対応は許されない」という行政側の意識の現われで、行政とボランティアが共通の認識・信頼感を持ち合わせていなければ「機能不全」となるのは明らか。今回震災直後からボランティアが上手く機能した自治体の例では、“平時”より、行政/ボランティア/NPO等が訓練を繰り返し、相互の信頼感を培っているそうです。

それでは我々大家業はどうか?残念ながら大家業は個人事業主(法人含む)によるものが大半で、いざ組織的に行動を起こすという際に受け皿となる組織体がありません。「無い」というのは言い過ぎですが、その実態は業者さんが運営主体であったり、行政側と連携して組織的な活動が出来る状況にないことは、今回の震災で課題として認識されました。

震災からの復興は、まだ始まったばかりです。更に悪いことに、原発問題もあります。これから行政(政府)も本格的な復興の道筋を示してくるでしょう。その時、大家さんが組織的な活動が出来るようになる、最初の一歩は大家さん自身による「気づき」だと思います。

今回の大災害は悲しい現実です。しかしその現実から我々大家さんはまず自分自身で「気づき」、組織的な活動が出来るような体制を組み立て、今回の震災からの復興のみならず、将来に予測されている関東以南での大震災にも対応できるべき「仕組みづくり」に、参加出来る様にならなければなりません。それを学ばなければ、日本国民として大災害で被災された方々への申し訳が立たないと私は思います。

そのような「大家さんによる組織的活動」が出来るようになれば、現在の賃貸市場に於いて、我々大家さんによる健全な投資を阻害するような「外部要因(更新料問題、滞納問題等)」にも対応できるようになり、結果として、入居者様に快適な住環境を提供し続けられるような活動にも結びつくと考えます。

<大家さんへのメッセージ>
「空室率10%以上」と嘆いているばかりでは何も問題は解決しません。まず「行動を起こす」ことだと思います。その第一歩が、5月28日のシンポジウムを通じて大家さん自身が何かに「気づく」ことだと思います。難しい問題を取り上げる必要はありません。身の回りの課題に目を向けるだけで、何かに「気づく」はずです。


<プロフィール>

落合 淑彦 (おちあい としひこ)
1959年東京生まれ。早稲田大学卒業後、(株)リコーに入社し、海外/国内マーケティングを担当。2006年相続により突然「素人大家」となる。サラリーマン感覚で大家業を展開し、5年間の成績(4棟50室)は空室率3.7%。
最近は「水(満室経営)と空気(大家業を取巻く外部環境)、どっちも大事」を理念に、5人の大家さんと「行動する大家さんの会」を結成。「消費税・非課税問題」には一家言を持つ。


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