3.11後の大家業はどうなる?! (長嶋 修)

2011-07-06

長嶋 修(ながしま おさむ)

空室率上昇と賃料下落で、賃貸住宅経営は厳しくなる一方。大家さんはこれから、時間がたてばたつほど大変になるばかりでしょう。

これがテーマの回答です。

3.11を境に全てが変わってしまいました。しかし、それ以前から、日本経済や政治はゆき詰まり、デフレや積みあがる国債残高や給与所得低下、少子化・高齢化、年金等社会保障増加など多くの難題を、この国は抱えていました。その上であの震災が起きたわけです。「大家さんはこれまで、よくこのような環境の中で賃貸住宅経営をしてきたものだ」というのが私の率直な感想です。

我が国の住宅市場はこれまで圧倒的に「持ち家」、それもとりわけ「新築持ち家」が優遇され、賃貸住宅市場はずっと未整備、正確にいえば「放置」です。新築持ち家を買ってもらうために国は低金利の住宅ローンを用意したり、税制優遇したりします。かつて圧倒的に住宅が足りないころ「国民に住宅を」として始まった住宅政策も、いつの間にか景気対策の道具として使われるようになってしまいました。

というのも、住宅がひとつ売れると生産誘発効果が2倍程度あるとされているためです。例えば2000万円の住宅がひとつ売れれば4000万円の乗数効果があるとされます。これほど効率のよい産業は他に見あたらず、ちょっと景気が悪くなると必ずといっていいほど、住宅政策が景気対策の道具として用いられてきました。

たとえば新築持ち家を買う方が使う「フラット35S」の金利は1.63%、(SBIモーゲージ 2011年4月現在 当初10年)ですが、これは税金を投入することでこのような低金利を実現しているのです。そのうえ「住宅ローン控除」を使えば、残高の1%が税額還付。さらに、不動産取得税や固定資産税、登録免許税なども優遇措置があります。

住宅予算もしかり。日本の住宅予算が他国に比べて「持ち家」とりわけ「新築」に傾斜し、「賃貸」へのそれが圧倒的に少ないのです。

「世帯に対する補助」が少ないのも特徴。英・米・仏は「世帯(家計)」に対する住宅手当・家賃補助が「住宅(建物)」に対する建設費・維持費補助を上回っています。せいぜい「生活保護」に項目として含まれているのと「特優賃」の家賃補助程度で、予算全体からみればわずか。一方英米独仏の「住宅手当:建設補助比率」は「仏2:1」「独1:1」「英米はほとんど住宅手当」ですが、日本には民間借家への補助がほとんどありません。

このような社会の構図を変えなければ、いつまでたっても賃貸住宅経営は厳しいままでしょう。同時に日本全体も沈みます。

<大家さんへのメッセージ>
住まいは、住んでいる方にとっては「生活」の土台であり、社会的には「文化」の体現。また金融機関や不動産市場から見れば「金融商品」で、大家さんから見れば「資産」に他なりません。あらゆる側面を持つこの世界がよくならなければ何もかも変わらないのです。それだけ重要な位置にいるのが大家さん。日本の未来はあなたの双肩に。


<プロフィール>
長嶋 修 (ながしま おさむ)
不動産コンサルタント。1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社、株式会社さくら事務所を設立。また、国土交通省などの委員も歴任し、08年にはホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立。初代理事長。メディア出演 、セミナー講師、執筆活動等、幅広く活躍中。『不動産投資「やっていい人、悪い人」』(講談社+α新書)他、著書多数。


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