上喜撰(蒸気船)、たった四杯で夜も寝られず (落合 淑彦)

2011-08-06

落合 淑彦(おちあい としひこ)

こんにちは、“行動する大家さんの会(AOA)”の落合です。“全国大家ネットワーク(大家ネット)”のコラムには、2度目の登場です。今回は、我々大家さんが置かれている“社会環境(賃貸市場の経営環境)”についてお話させていただきます。

私はこの話をする際、江戸時代末期にはやった狂歌を引き合いに出します。

“上喜撰(蒸気船)、たった四杯で夜も寝られず”

鎖国の世に突然現れた黒船四艘により、江戸幕府が崩壊したきっかけとなった状況を風刺した狂歌ですね。私は5年前に突然サラリーマンから大家さんになったのですが、サラリーマン(黒船)の目で現在の賃貸市場(鎖国の日本)を俯瞰すると、“これっておかしくない?”という慣習・問題点がたくさん見えました。先ほどの“四ハイ”になぞらえて、

一ハイ目: 敷引き問題
二ハイ目: 更新料問題
三ハイ目: 賃借人居住安定法(滞納家賃督促制限法)
四ハイ目: 自殺者遺族に対する損害賠償請求制限法(←私が勝手につけた仮称:賃貸物件で自殺事案が発生した場合、原状回復費用を大家が遺族に請求できなくしようとする要望)の立法化

我々大家さんは、どの勉強会でも言われるとおり“経営者”ですね!経営者である以上、“最大の経済効率”を追求します。つまり、“満室経営”を常に目指し、日々切磋琢磨している訳です。この部分は各大家さん個人の努力に負うところが大きいですが、例えば上記に上げた四つの“経営環境”に対してはどうでしょうか?

敷引き問題と、更新料問題については、今年3月・7月に3件の最高裁判決が出され、いずれも大家さん側の“全面勝訴”という結果となりました。“最高裁判決”ですから、これで“法律的には最終決着”がつき、多くの大家さんが正直“ホッ”とされたことと思います。しかし、これはあくまで“法律的解釈の確定”であって、我々のお客様である入居者様の意識が180度変った訳ではありませんね。つまり、社会の目は以前と全く変わっておらず、“大家さんは経営者としてもっと経営の透明度を上げよ”、ということですね。

更に3つ目は、過去“ごく一部の保証会社”により強引な取り立てが表面化した問題に対し、国家が滞納家賃の回収方法に制限を加えるものです。“ごく一部”と申したのは、実際日本の賃貸市場で、どれくらいの滞納が発生し、どのような取り立てがなされているのか、政府は過去統計となるような調査を一度もしたことがないのです(直接国交省に2度確認しました)。つまり、滞納の実態も分からないにも関わらず、“とりあえず、大家の正当な権利(債権回収)を制限してしまえ”、というのが現在の政府の方針です。

四つ目についてある弁護士の先生は、“そんな法律の立法化は不可能”とおっしゃいました。しかしそれはあくまで“法律理論の話”であって、そのような社会運動が起こること事態が大家さんの経営に対して大きな打撃であることは間違いありません。

上記四つは大家さんなら誰でも知っている“経営環境のリスク要因”ではありますが、この“リスク”に対して我々大家さんは何か出来るでしょうか?残念ながら現状では“Nothing(何もない)”と言わざるを得ません。つまり、個々の大家さんがどんなに満室経営の努力をしても、経営環境のリスクに対しては無防備な状況であることを大家さんはまず認識しなければなりません。

社会はルール(常識・慣習・法令)に従って活動します。しかし、賃貸業にかかわるルール(法令)は、当事者である我々大家さんが全く関わらない状況で作られています。この状況を改善し、我々大家さんが安心して賃貸業を経営する、つまり、良好な住環境を入居者様に提供し続けるためには、まずはこのルール作成・改訂の作業に、大家さん自身が参加する仕組みの構築が不可欠です。

その第一歩が、“大家ネット”です。まずは、全国の大家さんがつながる(ネットワーク)ことにより、ひとつの声を作ることです。

大家ネットの試みは、少なくとも日本では初めての活動です。今、多くの大家さんが声をあげ、参加いただくことで、5年後・10年後の賃貸住宅市場が確実に良くなり、我々大家さんはもちろん、入居者様および賃貸市場に関わるすべての方が幸せになれるよう、“初めの一歩”を一緒に歩み出しましょう!


<プロフィール>

落合 淑彦 (おちあい としひこ)
1959年東京生まれ。早稲田大学卒業後、(株)リコーに入社し、海外/国内マーケティングを担当。2006年相続により突然「素人大家」となる。サラリーマン感覚で大家業を展開し、5年間の成績(4棟50室)は空室率3.7%。
最近は「水(満室経営)と空気(大家業を取巻く外部環境)、どっちも大事」を理念に、5人の大家さんと「行動する大家さんの会」を結成。「消費税・非課税問題」には一家言を持つ。


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