賃貸住宅市場をめぐる環境はグダグダ (長嶋 修)

2011-08-09

「全国の大家さん・不動産投資家は、よくこのような環境の中で、アパート経営をやっているよなあ」というのが、私の率直な感想です。

日本の住宅予算は、その過半が新築持ち家に向けられています。残りを中古住宅(持ち家)と賃貸住宅が分け合う構図。賃貸住宅はあくまで持ち家を持つまでのステップと位置づけられており、持ち家を、とりわけ新築持ち家を買ってもらうことを前提とした制度設計になっています。

このように、過度に新築持ち家に傾斜した政策を採っているのは、先進国では日本だけです。

※欧米各国の住宅予算の比較(PDF)

1980年代あたりから「住宅政策」はいつの間にか「景気対策」となり、すでに人口減少局面に入っているにもかかわらず、税金投入による「住宅ローン金利優遇」や不動産取得税や固定資産税、登録免許税などの「税制優遇」で新築持ち家政策を続けてきた結果、空き家が800万戸近くにまで膨らんでしまいました。賃貸住宅に限れば空家率は20パーセント超です。

もし従来ペースで新築持ち家を造り続けた場合、30年後の2040年には空き家率は43パーセントに。もし半分のペースに落としたとしても30年後には36パーセントの空家率となってしまいます。

どの道、このままでは住宅政策は持続不可能なのです。

※ハウスメーカーの未来

これまでの住宅政策の中で、新築持ち家が優遇される中で賃貸住宅に空きが発生し・・・ということが、もう何十年も続いているわけです。

また「借地借家法」をはじめとする賃貸住宅経営を取り巻く各種の法制度も、ずっと未整備のまま。

賃貸住宅に住む家計に、まともな「家賃補助」がないのは、先進国では日本くらいなもの。景気後退やデフレ、国債発行増大や給与所得者の所得低下というトレンドの中で、賃貸住宅経営はますます苦しくなる一方です。

※住宅業界はこんなふうにできている

そのような中で「東日本大震災」が起きてしまいました。このような状況の中で、大家さん・不動産投資家は何を考え、どう行動したらいいのか。これから賃貸住宅市場はどうなっていくのか。震災にあたり貢献できることはないか。

また、これまで私は古住宅市場(不動産流通市場)について各種の提言を行ってきましたが、改めて賃貸住宅市場への政策提言を行う必要性を感じています。

※【中古住宅市場】に関する政策提言

※賃貸住宅市場に関する政策提言(PDF)

※消費増税で大家はいったいどうなる?


<プロフィール>

長嶋 修 (ながしま おさむ)
不動産コンサルタント。1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社、株式会社さくら事務所を設立。また、国土交通省などの委員も歴任し、08年にはホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立。初代理事長。メディア出演 、セミナー講師、執筆活動等、幅広く活躍中。『不動産投資「やっていい人、悪い人」』(講談社+α新書)他、著書多数。


Copyright(c) 2017 全国大家ネットワーク All Rights Reserved.