業界の安定は共同責任 (下條 雅也)

2011-08-24

下條 雅也 (しもじょう まさや)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
突然ですが質問です。
Q: あなた(大家さん・不動産投資家さん)のライバルは誰ですか?
この答えを、頭の片隅に置きながら、ちょっと長いですが、このコラムにお付き合いくださいね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「最近の若い奴は・・・」
遠い昔から言われ続けているフレーズです。私は「逆の意味で」最近の若い人たちには感心させられる事がたくさんあります。

例えば、会社のランチ風景を見ると「お弁当」を持参する人が増えています。もちろん、女性だけでなく男性も同じで、自炊をして、安くて、健康的な食事をすることが、当たり前な時代になって来ています。

「車」も持たない人も増えているようですね。例えば東京に住んでいれば、交通網も発達していますし、特に必要を感じない人も多いのではないでしょうか?デートの時などは、レンタカーなどを利用するそうです。
「バック」もブランド物を止めて、雑誌の付録のバックを使ったりと、こんな例は枚挙に暇がありません。

ただ彼ら、彼女らは、お金がないと言う理由だけで「節約」している訳では、どうやらない様です。そこで節約したお金を「自分に最も使いたい所」でちゃんと使っています。それは、海外旅行であったり、余暇の趣味を充実させるためであったり、資格を取るための資金にしたりと「自分が一番納得行く」ところでちゃんと消費しているんですね。

私は、この新しい世代の人達は、本当の「価値」や「豊かさ」という物を敏感に感じ取る能力に長けているのだとしばしば感じます。
では、一番最初にした、私の「質問」にあなたはなんと答えたでしょうか?

Q: 同地域の物件? 公団の賃貸? あるいは、新築戸建て? 分譲マンション?

直接的な意味では、もちろん正解でしょう。しかし、広い意味で解釈した場合、「全ての業種」がライバルになります。そして、その中で最もあなたの「強敵」になるのは、本当の「価値」や「豊かさ」を追求している業界になるでしょう。だって、同じお金を使うのであれば、「より意味のあること」に使いたいというのは当然のことです。

ですから言い換えれば「ちゃんと価値を与えてくれない業界の商品」に支払う額を減らして「ちゃんと価値を与えてくれる業界の商品」を購入する。これは特に若い世代の人たちにとって、当然の考え方なのです。
では、私たちの業界は本当の「価値」や「豊かさ」や「幸せ」を「消費者」に提供出来ているのでしょうか?
一例を挙げます。

先日、地元の不動産屋さんの店長さんとお話をしました。彼は、セールストークに長け、笑顔も素敵な、なかなかのイケメンで、頭も切れる優秀な店長さんです。その彼に私はこんな、質問をしました。
「お客さまに紹介する物件のプライオリティ(優先順位)は何ですか?」
彼は
「もちろん、第一は自社の持っている物件です。その次は大家さんから委託されている管理物件、それからADが多い物件、そして・・・」と話が続きます。

しかし、とうとう最後まで「お客さまが、本当に探している物件」と言う言葉は出てきませんでした。このような考え方は、何も彼特有の物ではなく、私の知る限り、私たちを取り巻く業界では、ごく一般的な考え方のようです。そして大家さん達も、このルールを当然の大前提として、商売を続けています。

私は今までほとんどの月日を流通業・小売業で過ごしてきました。そして、現在は経営コンサルタントとして、さまざまな業種のお手伝いをさせて頂いてます。その立場から、もし、あるお店が自店の都合、つまり「自店の粗利や利益」だけを優先して販売し続けていたら、数年も経たずに「閉店」することは間違いないと確信して「そんな馬鹿なことはやめなさい」と指摘するでしょう。

あくまでも、上記の例はほんの一例で「この業界がオカシイ」と思うことは、列挙すればキリがありません。更新料裁判が起きたのは、それが「正しい・間違ってる」ではなく、この業界に対する「警告」なのだと私は受け取っています。

上記の話を読んで「私は大丈夫」って思われるかもしれません。ただ「あなた」は「ちゃんと」としていても「業界全体」が間違っていると認識されていれば、あなたも「同類項」になる訳です。沈みゆく業界でどんなに頑張っても、その努力は報われないとのだと、私は感じます。

私の言いたいことを上手く表現してくださった方がいますので、その方の言葉を最後にご紹介して、このコラムを終わりたいと思います。
では、松下幸之助氏の一文のご紹介です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「業界の安定は共同責任」
どんな商売でもそうでしょうが、お互いのお店が力強く発展、繁栄していくためには、そのお店の属している業界全体が常に健全で、世間の人々から信用されているということが大事だと思います。
「あの業界は信頼出来る業界だ。どこの店に行っても、よい品を適正な値段で売っているし、お客に対するサービスもいい。だから安心して買い物できる」
と言われているような業界であってこそ、お客様にも喜ばれつつ個々のお店の商売もほんとうに繁栄するのだといえましょう。
そのためには、その業界に属する店がそれぞれに健全で、お客様に信用されるものでなければなりません。もしそうではなく、業界の中に不健全な店が多ければ、
「あの業界はダメだ。信用できない」
ということになって、業界全体としても大きな損害を受けることになってしまうと思うのです。
そういうことを考えてみますと、お互い商売を進めていく上で、自分の店を健全なものにしていくことがまず第一に大切なのはいうまでもありませんが、それと同時に、他のお店とも上手く協調して、業界全体の信用を高めるということも配慮していかなければならないと思います。
もちろんそうはいっても、他のお店と仲よくすることのみにとらわれて、互いに競争するとう姿が生まれてこないということではいけません。
そういう競争のない状態からは、業界の進歩、発展というものはやはり生まれてこないでしょう。
ですから、お互い、正しい意味での競争、秩序のある対立というものは大いに行わねばなりませんが、その対立、競争の中に調和を見出していく。
つまり対立しつつ調和することによって、自他ともの健全化を考え、同時に業界全体の信用を高めることを考えていくことが肝要だと思います。
そのように業界全体が世の人々から頼りにされることが、新しい時代における業界のあるべき姿である。
またそういう姿をお互いが協力して実現、商売人として一つの尊い務めもあると思うのです。
松下幸之助著 「商売心得帖」より抜粋


<プロフィール>

下條 雅也 (しもじょう まさや)
1970年生まれ。カナダの大学を最優秀成績で卒業。卒業後、出版社を経て、貿易商社の立上げを経験。バイヤーとして世界各国を飛び回る。国内最大手GMS(総合スーパーマーケット)で店舗マネージャー・本部にて財務コントロールを務める。大手商社にて関係会社のコンサルティング業務を行い、その後独立。現在、賃貸業・小売業の経営傍ら、主にスモールビジネス経営者さま対象に「顧客第一」の視点から経営コンサルティング業務を行っている。
株式会社BCコンサルティング 代表取締役
株式会社西徳 専務取締役
行動する大家さんの会 代表
NPO法人賃貸経営110番 登録相談員・セミナー講師
全国大家ネットワーク 発起人


Copyright(c) 2017 全国大家ネットワーク All Rights Reserved.