タイタニックを、不沈空母へ・・・グローバル大家の処方箋 (鈴木 学)

2011-08-29

鈴木 学 (アジア太平洋大家の会)

私は、東京で暮らすサラリーマン大家ですが、日本の同世代のなかでは、ユニークな経歴を積んできたと思います。

1994年  日本で大学卒業、就職  
2000年  オーストラリアに移住、現地で就職。
2005年  中国に移住、現地で就職
2007年  日本にUターン帰国

日本人のほとんどは、日本で就職し、日本国内で家を借りたり、ローン組んでマイホーム買ったりしますが、私の場合、その舞台は主に海外でした。オーストラリアでは英語を、中国では中国語を使って、ローカル(地元民)として、就職、会社の仕事、家の購入などを、こなしてきました。

そのような経験をしてから、数年前、日本に戻ってきました。私が今でも、不思議に思うのは、この国を重苦しく覆う、途方もない閉塞感のこと。

確かに、バブルが弾けて以来、20年ずっと、日本経済は振るわない。
デフレで、給料は下がる、職は不安定になる。
少子高齢化は止まらず、年金財源は、将来どうなるか分からない。
若い世代は、ますます委縮して、内向きになる。
政治的にも迷走が続き、全く解決が見えない・・・

大家さんの立場からいっても、増えない人口、埋まらない空室と、家賃下落が収益を圧迫する。「手詰まり感」は、確かに理解できる。

ただ、外国の空気を吸ってきた私に言わせれば、日本人がここまで閉塞感を感じるのは、「ある前提」をもとに思考しているからだと思います。

前提1.私たちは日本に生まれて、一生、日本語を使い、死ぬまで日本で暮らす。
前提2.日本が抱える社会問題は、日本の国土の上で、日本人だけの手で、解決せねばならない。

私が不思議に思うのは、なぜ、「しなやかに、海外の力を使うこと」を考えないのか?
日本(人)だけで解決が難しくても、海外と上手にコラボできれば、解決の糸口が見えてくるかもしれないのに・・

たとえばの話、日本は今後40年間で、約3千万人の人口が減ると予想されています。しかも、若い人が少なく、老人だけが多い、「逆ピラミッド」の人口構造になる。これだけみると、確かに、絶望感が襲ってきます。

しかし、日本のすぐ近くにある「フィリピン」と、コラボできればどうでしょう?
この国は、あと40年間で、6千万人近い人口が増えると予想されています。人口構成は非常に若く、今のところ、子沢山で老人が少ない、きれいなピラミッド型。あと40年後でさえ、「働き盛り」が多い、元気な人口構成。

つまり、日本の労働人口の減少を補って余りあるほどの人口増加が、フィリピン一国だけで実現する。東南アジアには、他にもインドネシア、ベトナム、マレーシア・・・人口の若い国がたくさんある。そんな地域がすぐ近くにあるのに、なぜ、日本のなかに閉じこもって、あれこれ悩むのか?

大家さんにしても、同じこと。

たとえば、日本国内で、マンションを新築した場合、築浅のうちは、入居率も高く、修繕費もほとんどかからず、確かに現金は入りやすい。

ところが、その現金を日本に置いても、利子はつかないし、殖やすのは難しい。しかも、マンションも築10年を超えてくれば、どうしても入居率は下がる、家賃も下がる、修繕費はかかる、現金を生みにくい構造になってきます。

ですので、現金の入る築浅の10年間を利用して、東南アジアの不動産市場を使って、「殖やす」のはどうでしょう?

今、日本以外のアジアは、どこも勢いよく、経済発展しています。インフレ傾向ですし、不動産価格も、賃料も、年々上がるのが当たり前。日本人が、現地の金融機関から、融資を受けられる国も多い。

いま東南アジアで、正しく投資対象を選べば、年利7-8%近辺で運用することは、そう難しくはありません。もちろん現地通貨ベースですので、為替の関係で、円換算額は安くなることもありますが、でも年利7-8%で10年間、複利で回したら、どれだけ増えるか?為替リスクを考えても、日本で年利ほぼゼロで運用するのと比べて、どれだけ良いか?

「海外(東南アジア)の成長を使って、マンション経営を安定化させる」・・・日本にこれまでなかった、新スキームの誕生。私はこの分野で、日本の第一人者を目指します。

このように、海外とのコラボをどんどん仕掛けていけば、今の時代を生きる日本人が、閉塞感を感じたり、将来を悲観する理由なんて、ほぼなくなるのです。


次に、国内に目を向けてみましょう。

大家業界をとりまく状況は、厳しくなる一方と言われていますが、見方を変えれば、「面白い業界になってきた」と感じます。

今の大家さんは、親から土地建物を相続した地主系大家ばかりではありません。今や、ビジネスマンとして、それぞれの分野でプロとして活躍してきた人たちが、大家業に大量参入して、新しい経営手法を次々と持ち込んでいます。ネットの活用も盛んになってきました。

その動きに刺激された、意識の高い人たちが、今度は業界のあり方、政治システムといった「大環境」にまで目を向けるようになり、「全国大家ネットワーク」という団体をつくった。これは望ましい動きだと思います。

たとえば、全国大家ネットワークに賛同している、行動する大家さんの会の理念を引用すれば、「水と空気」という言葉を使います。

「水」とは、満室経営に向けた、大家さん個々の経営努力のことを指し、
「空気」とは、日本の賃貸市場を取り巻く、社会全体の法制度や商慣習のあり方、お金の動き等を指します。

そして彼らは、「水の改善」とともに、「空気の改善」も必要だと主張します。私も、大賛成です。

海外で経験を積んできた、私の視点から言うと、いま日本の「空気」を変えるのに必要なことは、「不動産市場を正常化して、資産価値が目減りせず、お金がちゃんと回る状態」をつくることです。具体的には二つあります。

1)金融システムの改革:中古物件に対する融資基準を、法定償却期間の残存年数ではなく、建物としての寿命を基準にする
2)住宅政策の転換:新築一辺倒ではなく、ストック重視の住宅政策へ転換する

要は、「ゲームのルールを変える」ことが必要。これまでの仕組みでは、個々の大家さんがどんなに努力しても、日本の賃貸住宅市場がうまく伸びていかないから、この際、新しい発想、新しいやり方を模索していきたい。

そして大家さんが、行政や建築業界、不動産業界とともに、新しい日本の仕組みをつくる一翼を担っていく・・・それが、全国大家ネットワークの趣旨だと思うし、このような団体は、いまの日本に必要だと思います。

最後になりますが、今の日本はチャンスに溢れた素晴らしい国・・・私はそう思っています。

国内外にアンテナを広げ、新しい発想で行動することにより、沈みゆくタイタニック号と揶揄される日本を、不沈空母にすることは可能だと思います。

このような激動の時代に、母国・日本で活躍できる幸運と、素晴らしい仲間たちと共に歩む喜びを感じながら・・・

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


<プロフィール>

鈴木 学 (アジア太平洋大家の会)


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