オーナーに必要な想像力

2011-09-15

都内に駐車場として400坪の土地を所有している(うらやましい…)地主さんに先日会いました。

今、彼の元には「高齢者住宅建てませんか」「有料老人ホームはどうですか」などという高齢者住宅・施設関係の建設営業が多くあるそうです。
多くの会社が「共用風呂・食堂タイプで1室18㎡にでき最大戸数を取れます」という提案。
そんな営業トークに決まって彼は次のように切り返します。

「あなた達ね、地主に建たせて借り上げ期間が終わる20年後に返すと言われても、こちらもローンと使えない建物だけが残っては大変ですよ。考えても見て下さい、今18㎡が最低基準だからといって、その設定で建てたら、20年後にはもっと広い部屋が主流になっていて、競争力がなくなるのは明らかでしょう。私と一緒にジョイントして計画を立てるのであれば検討の余地はありますよ」

この話を聞いた営業マンたちは皆、話をそこそこに切り上げてサッと帰ってしまうそうです。彼がいう話は的をえてはいるものの、運営会社として効率を重視すれば規格化されたもの以外の提案はなるべく避けたいからでしょう。

高齢者は2025年には全人口の約3分の1を占めるようになり、高齢者向け住宅も60万戸が必要となります。誰もが人口が減少していく一般の人たちよりも、高齢者向けに目を向けるのはよくわかります。市場として有望なのは明らかです。
ただ、だからといって、最も条件の良さそうな運営会社を選び建てるというのはあまりにも安直ではないでしょうか。
有望な市場には多くの人が集まります。
その中でも、勝ち残るところと負けて撤退を余儀なくされてしまうところに分かれるでしょう。

では、どのように判断すればいいのか。この地主さんのように冷静に物事を考えて、ちょっと想像力を働かせるのです。
例えば、バブルのときに16㎡という広さのワンルームが多く供給されました。そんな住戸が今通用しないのは誰もが知っていることです。冷静に考えればそんな住戸が住宅として長期にわたって支持されるわけがないと思うのですが、当時はそういう発想を持たない人であふれかえっていました。
バブルで失敗した人たちの多くはこの想像力に欠けていたのだと思います。
数多ある情報を中途半端に収集するだけでは、なかなか良い判断は難しいのです。

「10年先はおろか5年先どうなるのか、予想がつかない」
さまざまな分野でよく出てくる話ですね。
もちろん、ものすごい勢いで変化している時代ですからわからないことだらけです。
でも、わかることだってあるはずです。
さまざまな統計等を見て、分析するのもよし、現在と過去を比較して、普遍的な原理原則を見出すのもよし。自分の想像力を働かせてみてはどうでしょうか。

これから先時代はどのように変化するのか、「確実なもの」などはわかりませんが、想像力を働かせることによって、リスクを回避できる部分が少なくないと思います。
賃貸経営に限らず、さまざまなビジネスにも言えることですね。
私も常に想像力を働かせられるように努力していきたいと思います。

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<プロフィール>
榎本 ゆかり (えのもと ゆかり)
東京都生まれ。日本女子大学卒業後、亀岡大郎取材班グループに入社。
住宅リフォーム業界向け新聞、リサイクル業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌などの記者を経て、平成15年1月「週刊全国賃貸住宅新聞」の編集デスクに就任。翌年9月に取締役編集長に就任。 新聞、雑誌の編集発行のかたわら、家主・地主や不動産業者向けのセミナーで多数講演。2児の母。


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