大家さんって持ってるの?~宝塚歌劇団からの考察

2011-11-18

全国大家ネットワークのミーティングは月に1回行われているのですが、その時に立ち話程度に「宝塚歌劇団」の話が一部の参加者の間で話題になることがあります。宝塚歌劇団とは、あの派手なメイクで女性だけが出演する、黒木瞳さんや真矢みきさんが出身の劇団のことです。私は全く興味がありませんでしたが、妻の影響で今では「にわかファン」のレベルを超えるようになりました。

「宝塚」の演目と言ったら、何と言っても、漫画やアニメでも有名な池田理代子さん原作の「ベルサイユのばら」でしょう。フランス革命の状況下、牢獄に囚われの身となった愛するマリー・アントワネットを、スウェーデン貴族フェルゼンは命がけで脱獄させようと説得しますが、それを拒みフランス王妃として毅然と断頭台に向かって行く。そんな純愛に乙女や乙女でもない私は涙する訳です。

前置きが長くなりました。「フランス革命」と聞いて、ずいぶん昔の話だな?私とは関係ないと皆さんは思われますか?ところがそうでもないと、私は「フランス革命」に想いを馳せる時、必ず思います。

1700年代後半、フランスでは財政赤字が深刻な問題となっていました。戦争が相次ぎ、財政がひっ迫する中、免税者である聖職者(約14万人)や貴族(約40万人)以外には増税が続き、約2600万人と言われる平民達はパンを買うことすらままならない状態でした。そんな中、宮廷では毎晩のように晩餐会が繰り広がれている。そりゃ普通に考えたら、平民は怒るだろと思いませんか?だいたい、そんな状況であったらマリー・アントワネットや当時の王ルイ16世に進言する者はいないのか?と思うでしょうが、進言する者たちは、ことごとく潰されてしまったのです。全国民の上からたった2%ちょっとの「持つ者」や「既得権益者」たち、つまり聖職者や貴族たちが自分たちの生活を変えたくないために、そう言う人々を排除して言ったわけです。もし(実在の人物ではないですが)オスカルが真剣にマリー・アントワネットに忠告していれば「ラ・マルセイエーズ(フランス国歌)」もなければ「ギロチン」なんて言葉は誰も知らなかったかも知れませんね。もしかしたら、今でもフランスは王国だったかも知れません。あなたは「持たざる者」たちが革命を起こしたことを当然と考えますか?

では、お話を現代に移します。「フランス」ではなく「地球国」と言う国の話です。この国では、上から数%の人達がほとんどの富や財産を持っています。数%には「日本州」や「アメリカ州」や「EU州」なんて言う州があります。国のルールも大体この州関連の人達が決めてしまいます。他の州で食べるものも無く大量の人々が死んで行っても、戦争で多くの人々が犠牲になっていても、自分たちの35年ローンや税金の支払いの事で頭がいっぱいで、10円で助かる命があると言うのに、見ても見ぬふり、もしくは無関心のようです。そんな中「持たざる州」の現状も見てみると、やっぱりその州でも上から数%の人がその州のほとんどの富や財産や利権を持っているようです。

ただ最近「持たざる州」では、その州の「既得権益者」を倒そうと言う動きが盛んになっているようです。「リビア州」では「持つ者」は「持たざる者」たちによって倒されてしまいました。(そこに「持つ州」の既得権益的な意図が働いたかどうかは定かではありませんが。)「地球国」とは子供でも「これはおかしい」と思うような事がまかり通る、まだまだ原始的な国なようです。

フランス革命から約200年。人間の本質なんてそんなに簡単に変わらないのだと「フランス革命」を想う時私は必ず思います。革命時、私が貴族だったら平民の事を真剣に考えられるのかどうかは怪しいものです。実際今、私は日本と言う国で生活していますが、遠い国のどこかで貧困で次々と死んで行く人々のことを想うことは稀です。200年どころか、きっと人類が誕生してから人間の本質はそんなに変わっていないのだと思います。ですから同様に、歴史では「持つ者」が「持たざる者」に叩かれると言うことが繰り返される訳です。逆に言うと「持つ者」とイメージされれば、叩かれる格好の餌食なのかもしれません。きっと心優しい「貴族」だって大勢いたはずです。「貴族」と言うだけでギロチンにかけられた人は大勢いたのだと思います。もしかしたら、遠い将来「日本人」というだけで、袋叩きに合う時代が来るかも知れませんね。もちろん、その時日本が「持つ国」であると言うことが前提ですが。

では、ここで日本国内における「大家さん」に対するイメージを考えてみましょう。ここは実際の数字ではなく、あくまでもイメージの話ですが、「不労所得」「楽な商売」「大金持ち」等々あまり好ましくない言葉が続きそうです。実際、私は1年半前まではサラリーマンをしていましたので、その時の大家さんに対するイメージは上記に近い物がありました。7・8年前、フェラーリに乗って自慢してる知人に何をしているのか聞いた所「不動産投資でひと山当てた」と言っていたのが、頭の片隅に残っていたからかもしれません。(彼は今、コンビニでバイトしていると風の噂で聞きましたが・・・)

しかし実際、私がこの世界に入ってまず思った事が「サラリーマンの方がよっぽど楽な仕事だな」と言うことです。大家業は世間一般のイメージとは私の知る限りもしくは一部の方を除き、大きくかけ離れています。
「全国大家ネットワーク」を始めるに当たり、私が一番恐れている事の一つが、この誤ったイメージが定着したまま、大家さんが権利を主張し始めた時の事です。言い換えると「持つ者」が自分たちの優雅な生活を守るためだけに、何か言っている、と思われることが怖い訳です。実際、私が知る多くの大家さん達は、決してフランス革命で言う所の「持つ者」ではありません。(「借金」をたくさん「持つ者」かも知れませんが。)統計的なデータは持ち合わせていませんが、むしろ、その他大勢の部類に入る方々が多いのだと感じています。
実際「持つ者」とイメージされる大家は叩いてやろうと言う動きはたくさんあります。7月に判決が出た「更新料裁判」もそうでしたし、「居住者安定法案」や「相続税増税」なんかもそのようなイメージの中で決められて行こうとしています。

私はまずこの一般の方々に広がる「間違ったイメージ」を変えることこそ、一番の重要な事なのだと感じています。『私たち大家は「持つ者」ではなく、住人の方々はもちろん生活者全ての味方なのですよ。』と訴え続けることが大切なのだと。『利益だけを追求するのではなく、大家業を通して、全ての人々の幸せを願う集団なのだ』と理解して頂ける事が大切なのだと感じています。

時々、歴史には稀なケースがあります。例えば、原稿を書いている現在来日している「ブータン」と言う国では、王自ら王政を廃止することを国民に説き、民主化の大切さを訴えたと言う例があります。ブータンでは前国王が「国民総生産」(GNP)の代わりに「国民総幸福量」(GNH)と言う概念を説き、国民から支持を集めています。言い換えると「持つ者」が「持たざる者」と「幸福」を目指して同じ歩みをしようと訴えた訳です。本日(11月17日)日本の国会でブータン国王が「国民総幸福量」について演説をする予定なので、ぜひ後日、何かの記事等でブータン国王がどんな事をおっしゃったのかのか確認してみてください。

大家さんが「マリー・アントワネット」になるのか、「ブータン国王」になるのか。それはあなた次第です。その前にそもそも、我々大家の多くは、国政を左右する程の「持つ者」ではないと思いますし、仮に「土地」を持っていると言われても、ドラッカー曰く「資本家」の時代は終わりを告げ、ポスト資本主義の階層は「知的労働者」の時代になったと訳ですと、大家さんを悪く言う知的な人々に反論してみましょう。

最後に蛇足ですが、大家さんは宝塚市の近くを通ったらぜひ「ムラ」(宝塚大劇場をファンはそう呼びます)に足を運んでみてください。案外私のようにハマるかもしれません。もし、演劇には全く興味が無かったら周辺を散策してみてください。自然と都市が調和し住みよい街と表彰されたことがあるくらい、大家さんの目を奪うような素敵な街です。きっと参考になるはずです。


<プロフィール>

下條 雅也 (しもじょう まさや)
1970年生まれ。カナダの大学を最優秀成績で卒業。卒業後、出版社を経て、貿易商社の立上げを経験。バイヤーとして世界各国を飛び回る。国内最大手GMS(総合スーパーマーケット)で店舗マネージャー・本部にて財務コントロールを務める。大手商社にて関係会社のコンサルティング業務を行い、その後独立。現在、賃貸業・小売業の経営傍ら、主にスモールビジネス経営者さま対象に「顧客第一」の視点から経営コンサルティング業務を行っている。
株式会社BCコンサルティング 代表取締役
株式会社西徳 専務取締役
行動する大家さんの会 代表
NPO法人賃貸経営110番 登録相談員・セミナー講師
全国大家ネットワーク 発起人


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