生活者のブランドコントロール

2011-11-21

そろそろ街がクリスマスムードになってきました。
先日ふと見かけた賃貸物件にも、素敵なリースなどクリスマスオーナメントがあちこちに。オーナーさんのご配慮でしょうね。

近年、大家業=サービス業といった意識をもつ大家さんが急増し、賃貸住宅にはどんどん新しい付加価値や創意工夫がもたらされ、ここへきて進化のスピードが加速している感があります。
待ったなしの需要減、供給過多、マーケティングなどビジネスセンスに長けたサラリーマン大家さんの台頭・・・さまざまな要素があいまっての状況でしょう。私自身、いくつかの理由があって今は『賃貸派』ですが、これから先の賃貸住宅選びがとても楽しみに思えます。

個人的に一番気になっているのは、『手を加える余地のある賃貸』という流れ。すでに各所で話題になっていますが、URさんの『DIY物件』(http://www.ur-net.go.jp/diy/)や壁紙セレクトの『メゾン青樹』(http://www.maison-aoki.jp/)などがその一例です。
住宅、こと賃貸住宅の世界においては、消費財など他業界でのコミュニケーション戦略が数段遅れてやってくる印象がありますが、生活者が手を加える余地、というのはその典型例ではないでしょうか。

供給側がブランドをコントロールした時代から、受け手側、生活者がブランドをコントロールする、難しくも刺激的で面白い時代へとコミュニケーションの世界は様変わりしました。大きな要因としては、ネットによる情報量の増大と市場の成熟があげられるでしょう。

古いデータですが、総務省平成18年度情報流通センサス報告書によると、生活者をとりまく選択可能情報量(各メディアの情報受信点において選択可能な形で提供された情報の総量)は、基準年である平成8年度から530倍となりました。メディア別に見ると、特に大きなシェアを占めるのがインターネットです。
データは他にも消費可能情報量や消費情報量など、この時点ですでにどれほど私たちの消費情報量が増大しているか、また選択可能情報量のうち大半の情報が埋もれているか(無視されている)といったことを実感させられる結果となっています。

(※現在は新たな情報流通量指標の枠組みについて検討を行うため、平成21年1月から「情報流通インデックス研究会」が開催され、報告書がまとめられています。
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/16188.html

いずれにしても情報は飽和状態にあり、供給側が情報によって生活者を動かすことは困難になりました。情報収集に長け、知識を有する生活者が企業活動、サービスへも大きく関与するようになり、主導権は生活者が握っています。
企業やあらゆるサービスは、CGMなど生活者自身がパーソナルな関係と体験を共有する場にそっと参加させてもらい、あくまでも生活者主体の中でゆっくりと誠実に、関係を育成する方法を模索し始めているのです。

もちろん、この姿がすぐそのまま賃貸住宅市場にあてはまるとは思えません。量的には飽和しているものの、物件やサービスの質、ブランドコントロール、生活者はもちろん供給側の知識など、あらゆる面において成熟しているとは言いがたい市場だからです。
その分まだまだ工夫できる点があり、ブランドもコントロールできるのでしょう。

一方で、企業活動ほど規模を追わない賃貸経営にあっては、小規模ながら特定のファンを育成する、彼ら自身がお金を払いながら空間に、コミュニティに、あるいはそこで共有される文化に、積極的に関与していく賃貸住宅という選択肢も、求められているように思います。
私自身シェアハウスに住んでいて、昨今いかに管理会社が管理ノウハウを蓄積し、トラブルのないルールを運用するか、といった話が増えていることにちょっぴり違和感を感じているからかも知れません。この話は長くなるので、また別の機会に(笑)。

ソーシャルメディア時代のコミュニケーション戦略は、企業に手間と覚悟を突きつけました。この流れは賃貸住宅市場にも起こり始めていますが、事業規模がさほど大きくない賃貸経営には、とても面白いチャンスのような気がします。


<プロフィール>
大西 倫加 (おおにし のりか)
株式会社さくら事務所取締役、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会理事をはじめ、複数の企業・NPO法人の経営に携わりつつ、不動産・建設業界専門で、企業・個人のPRディレクターや書籍ライターなどを務める。 著書『建物調査入門』『住宅脳クイズ100問』など。執筆協力も多数。


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